九重地熱資源開発実験所は開設以来、大岳地熱発電所はもとより、約2km離れたところにある九州電力(株)八丁原地熱発電所の建設にあたっては、九州大学の地熱研究グループの中核として積極的に調査研究に従事し、わが国最初の熱水型地熱発電所の建設(大岳地熱発電所、設備容量1万2500kW)及びわが国最大の地熱発電所の建設(八丁原地熱発電所、設備容量11万kW)に大きく貢献してきました。

 その後、両地熱発電所の安定した操業に研究協力するとともに、次第に研究対象領域を九重地域全体に広げ、九重火山周辺に存在する地熱地域だけでなく、活火山からの熱エネルギー利用を目指して、九重火山そのものの研究を開始し、九重火山の熱過程解明に力を注いできました。

 このような中、1995年10月11日に九重火山は約250年ぶりと言われる噴火活動を開始しました。九州大学の地熱研究グループはそれまでの研究成果をもとに、国立大学合同観測班の中核として、活動の監視、予測に貢献しました。この噴火に関しては、噴火3年前には、九重火山の活動が新たな段階に入っていることを予測し公表するとともに、噴火の数ヶ月前には、噴気中に含まれる塩化水素が異常に増加していることを見出していました。なお、最初の噴火以降、地上にマグマは現れていないが、活発な噴煙活動は5年経過した現在でも衰えを見せず、地下浅部にマグマが貫入している結果と考えています。

 九重地域はその中心に活火山九重火山があり、周辺には多くの地熱地域があり、上述した大岳・八丁原地熱発電所以外にも滝上地熱発電所がすでに稼働中で、さらに新たな地熱発電所も計画されているわが国有数の火山・地熱地域です。

 「九重地熱・火山研究観測ステーション」では、本地域の地熱構造を解明する中で、既存地熱発電所の安定運転のための各種モニタリングに関する民間企業との共同研究、新たな地熱発電可能地域の抽出、そして将来的地熱資源である「活火山の熱エネルギー」利用を目指した研究など多様な観測研究を展開するつもりです。

 すでに、各地熱発電所地域では、重力変動観測およびGPS観測により、地熱貯留層のモニタリングを展開するとともに、活発な噴煙活動が継続する九重火山では地震観測、重力変動観測、GPS観測、各種熱的観測、地磁気変化観測、傾斜変動観測等各種の観測を行うとともに、平成13年度には、九重火山の噴気地域にボーリング孔を掘削し、各種の実験を計画しています。