噴気放熱量の観測には、当研究室で開発した噴気量・噴気放熱量を測定するためのリモートセンシング法(神宮司・江原,1996)を用いています。 この方法では、まず観測時に測定対象となる噴気をビデオカメラで撮影し、同時に気温と湿度(可能であれば噴気までの距離も)の測定を行います。 そして撮影したビデオ画像をパーソナルコンピュータに一定時間間隔で(本研究では1秒間隔)の静止画像データとして取り込みます。 噴気の評価の方法は、この画像データと対象となる噴気までの距離から噴気の大きさを読み取り、連続した画像を比較して噴気の流速を読み取っています。これによりまず、噴気の放出量を知ることができます(噴気の直径×流速=単位時間あたりの放出体積)。さらに、この値に観測した温度と湿度を考慮に入れることで単位時間あたりの放出量(質量)を算出し、この値の変化を観測しています。またこの放出量(質量)に噴気温度から推定した噴気の比エンタルピ(単位質量あたりの熱エネルギー)を掛けることで、噴気放熱量を算出しています。

《参考文献》
神宮司元治・江原幸雄(1996)最大噴気直径を利用した火山噴気放出量及び放熱量測定法、火山 第41巻第1号、23-29.



(2000年5月13日現在)

 1995年12月末の2回目の噴火以降、d火口からの放熱量は大きく低下しました。その後、1996年6月以降、一時回復しましたが、再び低下した後、最近では大きな変化は見られません。1995年10月の噴火直後はd火口からの放熱量が圧倒的であったため、その放熱量が減少するとともに、九重火山全体から放出される総放熱量も減少しました。しかしd火口からの放熱量が400MWから500MWで落ち着いてきた1996年9月頃からは、九重火山全体から放出される総放熱量(b火口+c火口+d火口+AC間)も大きな変化は見られません。

最大噴気直径を利用した火山噴気放出量及び放熱量測定法(神宮司・江原,1996)による九重硫黄山噴気放熱量測定結果